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 『今月の時事問題』(第73) H21.1.23発行
 
  発行元:新学フォーラム 毎月23日発行 
  http://www.shingakuforum.com/

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実は肝心な部分が分かっていなかった、ということがよくあります。
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知っておきたい話題を問題形式で取り上げ、独自の切り口から丁寧に解説します。

―――『今月の時事問題(21.1.23号)』―――――

バラク・フセイン・オバマ氏(47歳)が第44代米国大統領に就任しました。
ワシントンの連邦議会議事堂前で行われた就任式には、厳寒の中200万人も
の人々が集まり、新大統領の演説に耳を傾けました。

「この瞬間に、ここにいたいんだ」
多くの聴衆はそんな思いを胸に抱いていたようです。
かつて奴隷制度があった米国で黒人大統領が誕生するのは、
それほど歴史的な出来事なのです。

約80%という異例の高支持率。新大統領の誕生に米国は祝賀ムードに
包まれましたが、米国が直面する現実は甘さのかけらもありません。
就任式のこの日、ニューヨーク株式市場は大幅に下落しました。

オバマ大統領が演説の中で語った「新たな責任の時代」。
外交、経済、環境対策…すべて失敗に終わったブッシュ政権のやり方を
どう変えていくのか。

米国の「これから」が注目されますが、一方で私たち日本も「新たな責任」
を担う覚悟が必要だと思います。

さて、それでは今月の問題にトライしてみましょう!

★問題および解答・解説は平成21年1月20日現在で作成されています。

1.年末年始、「派遣切り」などで仕事や住居を失った人々が、東京・日比谷
    公園の「年越し派遣村」に集まりました。収容人数を超えたため、ある省
    の講堂が開放されましたが、何という省か答えましょう。

2.ある国の沖で海賊(かいぞく)による船舶襲撃が多発し、日本船籍も被害に
    あっています。日本政府は海上自衛隊の護衛艦を派遣する方針を固めました
    が、アフリカ東部のこの国の名前を答えましょう。
      ▲ヒント:「アフリカの角」と呼ばれる地域にある国。

3.中東のある国が、「パレスチナ自治区ガザ」に対して過去最大規模の空爆を
    行い、地上軍も侵攻させました。子供を含む一般市民に多数の犠牲者が出ま
    したが、空爆を行った国の名前を答えましょう。

4.今年はガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で天体観測をしてから400年目
    に当たり、国連などが「世界○○年」と定めています。各地で様々なイベン
    トが開かれていますが、○に入る言葉を答えましょう。

5. 1月5日、「第171通常国会」が召集されました。政府は景気対策の裏付
    けとなる2008年度の「第2次補正予算案」を国会に提出しましたが、通
    常国会の会期は何日間か答えましょう。

6. ロシアとある国が、天然ガスの価格などをめぐって対立しています。その影
    響で、EU(欧州連合)向けのロシア産天然ガスが供給停止になりましたが、
    ロシアと争っている国の名前を答えましょう。

7. ある高級牛の“元祖”の個体と同じ遺伝子を持つ「クローン牛」が、死後13
    年間冷凍されていた精巣を使って誕生しました。岐阜県特産の高級牛ですが、
    何というブランド名か答えましょう。

8.麻生太郎首相と韓国の李明博(イミョンバク)大統領が、ソウルで首脳会談を
    行いました。首相の訪韓は両国首脳が年1回相互訪問する「○○○○首脳外交」
    の一環ですが、○に入る言葉を答えましょう。
 
9.東京都町田市の病院で“ある病気”が集団発生し、職員や入院患者など100
    人以上が感染し3人が死亡しました。この冬も流行っているウイルス性の伝染
    病ですが、何という病気か答えましょう。

10.1月20日、バラク・オバマ氏が第44代米国大統領に就任しました。就任演
    説で経済活性化のため「太陽や風力、地力を活用する」と述べましたが、環境
    分野に力を入れるこの政策の呼び名を答えましょう。

《解答と解説》
1.【厚生労働省】… 企業に解雇されて年末年始に行き場がない人たちのため、
      NPOなどがテントを用意し炊き出しを行う「年越し派遣村」。1月2日
      に訪れた人が300人を超え、テントが足りなくなった。派遣村の実行委
      員会の要請に応じて、厚生労働省は日比谷公園に近い庁舎内の講堂を宿泊
      用に緊急開放。人々は寒いテントから講堂に移動して、ひと息ついた。そ
      の後、廃校になった小学校や旅館に移動するなどしつつ、個々に住居や仕
      事を決めていった。派遣村に避難した人は500人以上、ボランティアは
      約1700人。「民間」の動きが評価された一方、行政の対応は後手に回
      った。

2.【ソマリア】… ソマリアは、アフリカ大陸東岸にある国。91年頃から氏族
      間の争いで内戦状態に。現在は隣国エチオピアに支援される暫定政権が国
      を統治しているが、イスラム勢力との内戦が続いている。そんな中、同国
      では「海賊ビジネス」が横行。沖合を航行する石油タンカーなど各国の船
      舶を襲い、身代金で大金を稼いでいる。これに対し、欧米やロシア、中国
      は軍艦を派遣し、海賊対策に乗り出している。一方、日本も海上自衛隊の
      護衛艦派遣を検討してきたが、他国の船を助けると「集団的自衛権」の問
      題が生じる。政府は「海賊処罰取締法」(仮称)を国会に提出する方針を
      固めたが、当面は自衛隊法に基づく「海上警備行動」を発令して、海上保
      安官を同乗させた護衛艦に最低限の警備をさせる。

3.【イスラエル】… 紀元前に国を滅ぼされ世界に散ったユダヤ人たちは、19
      48年にパレスチナ地方に「イスラエル」を建国。その地にいたパレスチナ
      人は土地を奪われ、両者は長年にわたって戦い続けてきた。現在パレスチナ
      は、穏健派のアッバス自治政府議長が率いる「ファタハ」と強硬派のイスラ
      ム過激派「ハマス」が対立して分裂状態。ガザ地区を支配するハマスと、イ
      スラエルは、08年6月にエジプトの仲介で半年間の停戦を結んだ。しかし
      12月、ハマスはイスラエルのガザ封鎖を理由に停戦終了を表明、同国への
      ロケット弾攻撃を始めた。これに対し、イスラエルはガザに過去最大の空爆
      を実施、地上軍も進行させた。パレスチナ側の死者は、一般市民も含め13
      00人以上。国連安保理が停戦決議を採択したが効果はなかった。イスラエ
      ルはオバマ米大統領の就任に合わせ一方的に停戦したが、先行きは不透明。

4.【天文】… 国連とユネスコ、国際天文学連合は、世界中で「世界天文年20
      09」の企画を開催している。日本でもオープニングイベントが、群馬県立
      ぐんま天文台など全国の天文台や科学館、約40か所で行われた。今年2月
      には宇宙飛行士の若田光一さんが米スペースシャトルで国際宇宙ステーショ
      ン(ISS)に向かい、日本人として初めて長期滞在(約3カ月間)する。
      若田さんはISSで、日本の実験棟「きぼう」を完成させる。また、7月2
      2日には屋久島などで国内46年ぶりの「皆既日食」が見られる。太陽が月
      に覆われて昼間でも暗くなる壮大なドラマ、見逃したくない。

5.【150日間】… 通常国会は年に1回必ず召集され、会期は150日間。前
      半では主に予算案が審議される。必要な場合に臨時召集されるのが「臨時国
      会」。衆議院解散後の総選挙から30日以内に召集され、首相指名が行われ
      るのが「特別国会」。深刻な経済危機の中、「第171通常国会」が開会し
      た。政府は、昨年の臨時国会に提出しなかった「2008年度第2次補正予
      算案」を国会に提出。景気対策の裏付けとなる法案だが、「バラまき」と批
      判も浴びている総額2兆円の「定額給付金」が盛り込まれている。一方、民
      主党と社民党、国民新党の野党3党は、第2次補正予算案から定額給付金を
      削除する修正案を共同提出した。政府・与党は削除を拒否する構えで、与野
      党の対決ムードが高まっている。職を失った人が日に日に増える状況で、与
      党も野党も2次補正と09年度予算案を早く成立させ、景気対策を行うこと
      が大切だと分かっているはずだ。それでも「ねじれ国会」の下で選挙をにら
      んだ思惑がぶつかり合い、政治の動きは遅い。

6.【ウクライナ】… ウクライナはかつてソビエト連邦の1共和国だったが、近
      年は北大西洋条約機構(NATO)への加盟を目指し欧米寄りに。工業国だ
      が石油や天然ガスなどの燃料は、ロシアからの輸入に頼っている。ロシアは
      同国に国際価格より安く天然ガスを供給していたが、代金が未納になってい
      た。このためロシアが値上げを通告し、価格交渉は決裂。EUは天然ガス消
      費量の25%をロシアから輸入しているが、そのうち80%はウクライナの
      パイプライン経由。ウクライナがガスを抜き取っているとして、ロシアはE
      U向けのガス供給も停止した。欧州諸国で市民生活や企業に影響が出始め、
      EUが調停に。パイプラインに監視団を派遣することなどで供給再開が決ま
      ったが、安定供給に不安が残る。

7.【飛騨牛(ひだぎゅう)】…「飛騨牛」は岐阜県内で肥育された黒毛和種の
      高級品。種牛として約4万頭の飛騨牛を誕生させ、「飛騨牛の父」と呼ば
      れる「安福(やすふく)号」。1993年に死んだが、精巣が冷凍保存され
      ていた。その精巣を使って近畿大学と岐阜県畜産研究所が、クローン牛を
      誕生させることに成功。これまで体細胞を使ったクローン牛は国内で557
      頭生まれたが、いずれも生きた牛から。死後13年の細胞からの復元は画
      期的だ。絶滅生物の復活へ応用も期待される。死んだ肉質のよい牛のクロ
      ーンを大量生産する道が開けたが、クローン牛の食用については、なお議
      論が必要だ。

8.【シャトル】… 麻生首相と李明博大統領はソウル市内の大統領府「青瓦台」
      で会談し、4月2日に開かれる「第2回金融サミット」(ロンドン)を視
      野に、世界的な経済危機に日韓両国が緊密に協力して対応することを確認
      した。北朝鮮問題では日米韓の連携が重要と述べた。また、アフガニスタ
      ン復興支援の共同実施や止まっている「日韓経済連携協定(EPA)」の
      交渉再開に向けて努力することでも一致。今回の首相の訪韓は「シャトル
      首脳外交」の一環。李大統領が年内に来日することでも合意した。内閣支
      持率の下落が止まらない麻生首相、外交で挽回したかったが、効果は?

9.【インフルエンザ】… インフルエンザが集団発生したのは、町田市の認知
      症専門病院「鶴川サナトリウム病院」。職員や入院患者の約9割は予防接
      種をしていたが、死亡した高齢患者3人を含む112人が感染した。感染
      が拡大したのは、湿度不足と職員のマスク着用の不徹底との指摘がある。
      また、早い段階でタミフルなどを予防投与していれば防げたと病院を批判
      する声も。一方で、タミフルが効かない耐性ウイルスのインフルエンザが
      国内で確認されている。インフルエンザは「かぜ」とは違い、命にかかわ
      る怖い病気。完全には防げないにしても、予防接種やうがいなどは大切だ。

10.【グリーン・ニューディール】… 米国史上初の黒人大統領、バラク・オバマ
      新大統領の就任式は、ワシントンの連邦議会議事堂前で約200万人の群
      集を前に行われた。オバマ大統領はリンカーン大統領の聖書に手を置いて
      宣誓。米国に求められるのは「新たな時代の責任」と述べ、ブッシュ政権
      下で外交的にも経済的にも失墜(しっつい)した米国を再生させるため、
      国民に協力を求めた。今は圧倒的な支持を受けているオバマ大統領だが、
      難題が待っている。イラクからの撤退、アフガニスタンの治安回復、そし
      て深刻さを増す経済危機への対応。経済政策としては、風力・太陽光発電
      など環境分野へ重点投資する「グリーン・ニューディール」を掲げている。
      米国は「変革」できるのか?世界が注目している。

(キーワード)
●神奈川県立高校、情報流出11万人●
  神奈川県で06年度に県立高校に在籍した全生徒約11万人分の個人情報が
  流出。授業料徴収システムを開発していた日本IBMが業務委託した会社の社員
  のPCから、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を通じて流出した。情
  報を意図的に広めた人物は、削除を拒否している。

●誘拐された女医、赤羽さん解放●
  アフリカのエチオピアで誘拐された長崎大大学院生で国際医療支援団体「世
  界の医療団」の医師、赤羽桂子さん(32歳)と同僚のオランダ人男性看護師
  が、約3カ月半ぶりに無事解放された。2人は隣国ソマリアで拘束されてい
  た。

●米国短期旅行、「ESTA(エスタ)」が義務化●
  米国に短期間旅行する人などを対象に、インターネットでの事前登録を義務化
  する制度「ESTA」(電子渡航認証システム)が義務化された。出発前に米
  政府の専用サイトにアクセスし、住所・氏名などを入力して承認を受けなけれ
  ば搭乗できない。テロ対策などのため導入された。

●「バードストライク」で米旅客機が不時着●
  米ニューヨークの空港を離陸した旅客機が、鳥の群れにぶつかり飛行不能と
  なった。エンジンが鳥を吸い込んだ模様。機長は空港に引き返すのは不可能と
  判断、ハドソン川に緊急着水。救出作業にはフェリーや水上タクシーも加わり、
  乗員乗客155人は全員救助された。機長の冷静な判断と巧みな操縦は全米で
  絶賛され、「ハドソン川の奇跡」と報じられた。

(スポーツ)
●フィギュア全日本●
  世界選手権(09年3月、米国・ロスアンゼルス)代表選考会を兼ねたフィ
  ギュアスケートの全日本選手権。女子は浅田真央が1位、ベテランの村主章
  枝が2位、安藤美姫が3位。男子は織田信成が1位、小塚崇彦が2位、17
  歳の高校生の無良崇人が3位。男女ともこの3人が世界選手権代表に決定。

●サッカー天皇杯、ガンバ大阪が優勝●
  元日恒例のサッカー「第88回天皇杯全日本選手権」決勝。アジア王者のガ
  ンバ大阪が柏レイソルを1−0で破り、18年ぶり2度目の優勝。G大阪は
  来季の「アジア・チャンピオンズリーグ」への出場権も獲得。

●箱根駅伝、東洋大が優勝●
  新春恒例の「第85回東京箱根間往復大学駅伝」(東京・大手町〜神奈川県
  箱根町・芦ノ湖)が行われ、東洋大学が総合優勝した。出場67回目で初の
  栄冠。2位は2年連続で早稲田大学。勝候補と言われていた昨年の覇者、駒
  澤大学は総合13位に終わった。

●全国高校ラグビー、常翔啓光学園が優勝●
 「第88回全国高校ラグビー大会」(近鉄花園ラグビー場)は、決勝で常翔
  啓光学園(大阪第1)が御所工・御所実(奈良)を24−15で破り、4大
  会ぶり7度目の優勝。常翔啓光学園の前身の啓光学園は、4年前に戦後初の
  4連覇を達成している。

●全国大学ラグビー、早稲田大学が優勝●
  ラグビーの「第45回全国大学選手権」(東京・国立競技場)は、決勝で早
  稲田大学(関東対抗戦2位)が帝京大学(同1位)を20−10で破り、2
  年連続最多15回目の優勝を果たした。

●全国高校サッカー、広島皆実が優勝●
 「第87回全国高校サッカー選手権」(東京・国立競技場)は、決勝で広島皆実
 (広島)が鹿児島城西(鹿児島)を3―2で破り、初優勝。広島県勢としては
  41大会ぶり9度目。

●都道府県対抗男子駅伝、長野県が優勝●
  長野県が2年連続5度目の優勝。

(訃報・ふほう)
◎飯島愛(いいじま・あい、本名:大久保松恵)さん
  元タレント、ベストセラー「プラトニック・セックス」の著者
  12月24日、自宅で死亡しているのが発見された。36歳。
  東京都出身。ビデオ女優で芸能界デビューし、その後タレントとしてTVのバラ
  エティー番組などで活躍。自由奔放(ほんぽう)な発言が人気を呼び、93年に
  は歌手デビューも。2000年に発売された自伝的エッセイ「プラトニック・セ
  ックス」は、若い女性を中心に幅広い層に支持されて100万部を超えるベスト
  セラーに。映画やドラマ化もされ、大ヒットした。一方で、06年には個人事務
  所の経理担当者から数千万円の横領被害を受ける。07年3月に芸能界を引退し、
  新規事業を準備中に自宅で死亡しているのが発見された。死因は分かっていない。

◎サミュエル・ハンチントンさん
  世界的なベストセラー「文明の衝突」で知られる米国の政治学者
  12月24日、死去。81歳。
  ニューヨーク出身。23歳からハーバード大で教壇に立ち、以降07年まで58年
  間教えた。77から78年まで、カーター政権下の国家安全保障会議(NSC)で
  安保政策の調整官を務めた。93年に論文として発表し、96年に出版された著書
 「文明の衝突」は、世界を西欧・イスラム・中国・日本など8大文明圏に分け、宗
  教など文明の違いから紛争が起きる可能性を指摘。欧米とイスラム世界が衝突する
  危険性を、いち早く警告した。

◎アンドリュー・ワイエスさん
  田園など米国の原風景を描き続け、米国を代表する画家。
  1月16日、死去。91歳。
  ペンシルベニア出身。挿絵画家だった父に教えられ、9歳から水彩画を描き始めた。
  20歳の時に初めて開いた個展が話題を呼ぶ。生涯のほとんどを、自宅のあるペン
  シルベニア州チャッズ・フォードと、別荘のあるメーン州クッシングで過ごし、こ
  の2つの場所の風景とそこに住む人々を描いた。足の不自由な女性が草原をはう姿
  を描いた「クリスティーナの世界」(48年)や、70年から15年にわたって一
  人の女性を描き続けた「ヘルガ」シリーズなどが代表作。63年に米大統領自由勲
  章、07年に全米芸術勲章を受章。郷愁が漂う画風は、日本でも人気が高かった。

  ご冥福をお祈りいたします。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
★政府は今国会に「2009年度税制改正関連法案」を提出する予定です。この法案を
  めぐって、与党・自民党の内部で、造反(ぞうはん)するとか分裂するとか騒ぎが起
  こりました。その火種となったのが、「消費税」。麻生首相は3年後に消費税を上げ
  たい意向を示しましたが、法案の付則に「11年度から消費税を引き上げる」と書く
  かどうかが問題となりました(「付則」というのは、法律の主な事項にともなう必要
  事項を定める規定)。

  選挙がいつあってもおかしくなく、しかも大不況下のこの時期です。普通に考えれ
 ば、国会議員としては増税の話をするのは避けたいでしょうね。ところが、「消費税
 上げ」をはっきりさせたい自民党議員も多いようです。なぜなのでしょう? 英国で
 は日本の消費税に当たる付加価値税が引き下げられるなど、諸外国では減税の動き
 があるのに…。 今回はこの問題を考えてみたいと思います。

(なぜ消費税を上げるの?)
  日本という国家が膨大な借金を抱えているからです。国債や借入金などいわゆる「国
  の借金」は07年度末で849兆円! 先進国の中で最悪の水準で、企業や家庭なら
  破産寸前です。しかも、日本はこれからも高齢化が進んでいきますから、社会保障関
  係の支出はますます増えます。このままでは、日本の国家財政は破綻してしまう…。

  そこで政府(というか官僚なのですが)が目をつけたのが消費税。日本の消費税は現
  在5%、デンマーク・スウェーデン・ノルウェーの25%や、フランス・ドイツの約
  20%に比べれば、かなり低い税率です。ただ、これらの国々は日本とは比べものに
  ならないほど福祉や教育が充実していたり、特定品目が減税されていたりで、単純に
  は比較できないのですが。ともあれ、全ての国民から広く薄く徴収する消費税が、
 「1番上げやすい税」であることは確かでしょう。
 (財政赤字が拡大した原因や、消費税の基本的なことに関しては、08年6月号で詳解
   しています)

  消費税を上げたい理由が、「財政の健全化」というだけなら単純な話ですね。です
 が、もう少し複雑な理由もあります。それには政府のスリム化(行政構造改革)など
 が関わってきますが、ここでは話を先に進めます。

(誰が反対で、誰が賛成なの?)
  まず、自民党内ですが、「財政再建重視派」と呼ばれる人々がいます。与謝野馨・
  経済財政担当相などですね。この人たちは、とにかく財政を再建するために消費税
  の引き上げを強く主張しています。分かりやすい主張ですが、増税に頼ると無駄な
  財政支出がそのままになってしまう恐れもあります。

  これに対して、増税するのではなく、まずは政府をスリムにして支出を減らし、同
  時に経済成長で税収入を増加させようと主張する「上げ潮(あげしお)派」と呼ば
  れる人々がます。中川秀直元幹事長や「小泉チルドレン」の議員たちなどです。こ
  の政府のスリム化(小さな政府)こそが「小泉構造改革」。理想的にも思えますが、
  現実問題として「そんなことで財政再建ができるのか」と疑問を抱く人も多くいま
  す。また、政府をスリム化するということは、医療や福祉など社会保障費も切り詰
  めることを意味するのを忘れてはいけません。

  両派は消費税に関して対立していますが、「早く財政赤字をなくそう」という点で
  は一致しています。これに対して「しばらくは財政赤字でいいじゃん」という人々
  もいます。積極的に財政出動(国がお金を使って何かをすること)をして景気対策
  を図る「積極財政出動派」というべき人々です。麻生首相はこの考え方と言えるで
  しょう。でも、財政出動にはお金が要りますよね。赤字にも限度があります。その
  分を、消費税引き上げでまかなおうというわけです。

  ただ、どの派の議員であっても、近く予想される衆議院選挙に立候補する予定なら
  ば、「この時期」には増税を掲げたくない気持ちはあるでしょう。それで自民党内
  がもめたのです。

(自民党以外では?)
  自民党以外でも「積極財政出動派」を支持している人々がいます。例えば「官僚
 (役人)」の人たちです。官僚は国の予算で活動をしています。「政府のスリム化」
  とは予算や人員が減らされることですから、官僚は好みません。だから、官僚は
 「上げ潮派」を嫌っています。構造改革よりも、消費税を増税する方が官僚には都
  合がよいのです。

  また、大企業を中心とする経済界も、消費税の増税を期待しています。経済界は以
  前から「日本の法人税は高すぎる」と訴えてきました。消費税を上げて、「その代わ
  りに法人税を下げて欲しい」と言いたいわけです。

  官僚や大企業は、自民党の有力議員と密接な関係を築いています。彼らの意向が、
  自民党内の「消費税増税」の動きにつながっている部分もあります。

  一方、誰からも同じだけ税金をとる消費税の増税は、所得が低い人により厳しく
  なります(08年6月号参照)。「庶民の味方」を旗印にする社民党や共産党は、
  消費税上げに反対です。微妙な立場なのが、野党第一党の民主党。現段階での消費
  税上げには反対していますが、小沢一郎代表などは「いずれは消費税を引き上げる
  必要がある」と明言しています。もし次の選挙で民主党が政権をとったら、消費税
  をどう扱うのか注目されます。

(結局、自民党はどうするの?)
  消費税をめぐって不穏な空気が漂っていた自民党ですが、消費税の引き上げについ
  て、経済状況の好転を条件に「11年度までに必要な法制上の措置を講じる」と付
  則に書くことで政府と合意しました。一方で、「施行期日などを法律で定めるにあ
  たっては、景気の回復状況などを見極める」としています。つまり、実際に引き上
  げる時期については別の法律で定めるという「2段階方式」です。

  11年度に引き上げるかどうか分からない、非常にあいまいな内容ですね。「財政
  再建派」も「上げ潮派」も「積極派」も、みんな自分たちの主張が通ったかのよう
  な発言をしました。要するに、結論を先送りして「その場を収めた」わけです。自
  民党そして日本の政治の伝統的な得意技、「問題の先送り」…。

  日本の政治に「変革(チェンジ)」を期待するのは、難しいようですね。残念。

  それではまた来月、
  See you!  (SATO)
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